家族信託契約書 実際のこんな例①

皆さん、家族信託契約書を見たことありますか?
実は、契約書を作る組織、金融機関、士業によって内容は随分違うものになるんです。なぜなら、「契約書」ですから、当事者の自由に決められる部分が多いんですね。
その結果、制約の多い契約書になったり、自由度の高い契約書になったりします。今日は実際にあったお客様からのご要望に対して、私たちチーム(社)民事信託相談センターがどのように対応したのかをお話したいと思います。
信託口座に金銭の追加。契約書の巻きなおしが必要??
いいえ、必要ありません。
なぜなら、初回の契約書作成時に、「いつでも追加で金銭を信託できる」という内容の条項を法律に則った文章で盛り込むからです。
お客様にその旨をご説明したところ、大変驚いておられました。お客様が当社以外に相談されていた他社では、初めに決めた金額以外に追加で移す際には、再契約と手数料がかかりますと説明を受けられていたそうです。
このように「追加で金銭を信託する」ということ一つをとっても違いが出てくるのですね。
私たち民事信託相談センターが作成する契約書は、追加費用がかからないよう、お客様が使いやすい契約書の内容にするべくお客様の立場に立って作成しています。
なぜなら、家族信託契約を作って終わりではないからです。実際に家族信託として運用していくのはご家族なので、そのご家族が使いやすい契約書でなければならないと私たちは考えています。
ただし、委託者が認知症になってしまった後は資金の移動ができなくなりますので、その点はご注意ください。因みに、どこの業者に家族信託を頼んでも、「委託者が認知症になった後」は、資金の移動ができないことには変わりありません。
家族信託契約書 実際のこんな例②
契約書は公正証書にしないといけないの??
いいえ。必ずしも公正証書にしなければならないわけではありません。
まず、信託法にはどこにも「公正証書で作成しなければならない」とは書かれていません。そのため、任意で公正証書にするか、しないかを選ぶことになります。
公正証書にするメリットは、言った言わないの争いを回避することができることがあります。公証人が契約書の内容を当事者に読み聞かせ、内容に間違いがないかどうか当事者の意思を確認して証明するものですので、高い証拠力があります。
しかしながら、「家族信託契約書」を公正証書にする必要があるのでしょうか?
例えば信託する財産が収益アパートやマンションだったりして第三者に当該不動産が信託不動産であることを主張しなければならない場合などは、もちろん、公正証書にする方が良いと思われます。
ただ、ご自宅を親が自分の子供に託す場合などの文字どおりの「家族信託」では、公正証書にする必要はほとんどないのではないでしょうか。
家族信託の一番のメリットは、後見人など他人の関与を受けることはなく、ご家族内で信託した財産を管理、運用、処分ができることです。
ご家族内で信頼関係をもとに行う契約ですので、公正証書にするメリットは少ないですね。それよりも、デメリットの方が多くなってしまいます。
例えば、契約の当事者は原則公証役場に出向いて、手続きしなければなりません。その手続きには公証人が契約の内容を読み聞かせる時間も含まれます。お若い方であれば問題ないでしょうが、高齢の父母には大変な負担になってしまいます。
家族信託契約の多くは、高齢の父母が自身の子供に自宅を託すケースが非常に多いですので、本当に公正証書にするべきなのかどうか、今一度考えていただければと思います。
特に、病院や施設に入居されている方にとっては、かなりの負担になってしまいますから、公正証書にするのではなく、確定日付を取得するなどの対応をとらせていただいています。(※確定日付取得とは、その日にその証書(文書)が存在していたことを証明するものです。)
それに、費用も時間も余分にかかってしまいますので。
いかがでしたか?
今回は、追加の金銭信託と公正証書にするべきかというお話をさせていただきましたが、家族信託契約の内容はこれだけに留まらず、受託者の注意義務をはじめ、信託監督人のお話だったり、信託口口座のお話であったり、任意で決められる条項が複数あります。そのために契約書を作る業者、士業、組織によって内容がぜんぜん違うものになってしまうんですね。
ところが、一般の皆さまは、契約書の内容までをしっかりと理解されていることはほとんどないのではないでしょうか?まずは、信託契約書の内容が作る人によってぜんぜん違うものになるんだということをわかっていただけたら幸いです。
