信託契約は公正証書で作らないといけないの?
「信託契約は公正証書で行いましょう」と言われている方もいます。なぜ公正証書にしなければならないのでしょう?
公正証書にするとそのぶんお金もかかるしな~、とお悩みの方、今日は、そんな疑問にお答えしようと思います。
そうですね、例えば信託する財産が賃貸アパートであったりする場合は、「第三者に対抗」というんですけど、当事者以外の者(銀行や賃借人)に対して当事者間で生じた法律関係の成立を確実に対抗できるようにするために公正証書で作成することは必要です。
しかし、信託する財産がご自宅などであって、子どもにその財産を託す場合などは、必ずしも公正証書による必要はないと思われます。
遺言や金銭消費貸借契約書のように、公正証書に特別な効力(執行力)が認められているわけではありませんから、信託契約書に必ず公正証書を用いらなければならないわけではないです。
上記のように、信託する財産や信託する目的によって、その方の状況によって個々に判断するべきではないでしょうか。
信託契約は、必ずしも公証役場や金融機関の関与を必要としないで、誰もが自分の意思で締結できるものということを知っておいていただけたら嬉しいです。
でも、ここには注意してください。
ただし、信託契約書の内容は、信託法に準拠したものでなければなりません。さらに、信託契約は締結して終わりではなく、むしろ締結してからの長い期間にわたってのルールを決めるものですから、簡単にできるものではありません。
信託をする財産の種類やご家族の状況、誰に管理を託して、権利は誰に渡していきたいのか?何よりも自分の大切な財産をどのようにしていきたいのか?などそれぞれの状況は個々に違うものですから、信託契約書にひな形というものはなく、その都度、最も適した契約書の内容にすることが必要だと思っています。当然、未来に予想されるリスクも考えて作らなければなりません。
そして、信託は契約書自体よりも契約以後のケアや状況変化への対応が重要となりますので、各分野の専門家が知恵を結集して対応すべきものと考えています。
信託口口座についても少しだけお話しです。
「必ず金融機関で信託口口座という特別な口座を作らないといけない」という意見もあるようですが、信託法では「受託者は自己の財産と信託財産とを分別して管理しなければならない」としているだけで、こちらもどうしても信託口口座を作らないといけないわけではありません。財産を託された人が、金融機関で信託のためだけの専用とする口座を作り、それを信託専用口座として管理していけば何も問題はありません。
本日のまとめ
このように、信託契約は特別な人がする特別なものではなく、もっと身近な、私たち一般市民が誰でも行うことのできる契約なんだ、ということを知っていただければ幸いです。