おひとりさまでも信託ができる♪
現在の日本では、「おひとりさま」と呼ばれる方たちが増えています。結婚をしない、子どもを持たない、生涯を独身で過ごされる方々です。
この方々の遺産は生前に何もしなければ「ご兄弟」もしくは「普段は何の縁もない甥っ子姪っ子みたいな遠い親戚」に渡るか、相続人となる人が誰もいなければ「国庫帰属」になります。
今日は、おひとりさまにも使える信託をご紹介したいと思います。
今の民法の法定相続制度は、血縁関係のみで相続人が決まる制度なので、自分が亡くなった瞬間、相続人は決まってしまうことになるんですね。
このような問題に対処するため、最近は自分の死亡後に寄付をする「遺贈寄付」が増えてきています。
例えば、「自分の財産を自分が亡くなった後は、〇〇法人に寄付します」というような遺言を書くわけですけど、これにはひとつ問題点があります。
それは、遺言では事前に寄付先を決定しておかなければならないということです。
遺言は自分が元気な間に書くものですから、今の時点からすでに財産の行き先(寄付先)を決めることはなかなか難しいのではないでしょうか。
今からそんな先のこと、なかなか決められないですし、その法人(団体)が自分の死後も経営を続けているかもわかりません。
このように遺言で寄付先を指定しておくということも、なかなかハードルが高いものです。
そこで信託を活用することができます。
今の信託法には「受益者指定権」というものがあります。
受益者指定権というのは、受益者が亡くなった後に、第三者である受益者指定権者が次の受益者を指定してくれるという仕組みです。
これは、相続では絶対にできないことです。
なぜなら、民法上の所有権には権利の空白期間が無いからです。被相続人が死亡した、その瞬間に相続人が確定します。そして、もし相続人が数人いて、遺産分割協議で話し合って遺産の分配を決めたとしても、相続の開始(相続人の死亡時)にさかのぼって権利が生じるということになるので、財産に対する所有権にはすき間が生まれないんです。
ところが、信託では全く違う運びになります。
信託した財産は信託法に則って財産権が承継されますから、例えば次の受益者が指定されていなかったとしても受益者がいない状態が生じるだけです。信託はすぐには終了しません。誰も受益者がいない状態であっても、受益権は存在するという状態になるのです。なんだか不思議な感じもしますね。
そして、受益者指定権者が次の受益者を指定する。そして誰を指定しましたよ!ということを受託者に通知する。これによって新しい受益権が指定された受益者の元に発生するという仕組みです。
この仕組みを使えば、最初にお話した「遺贈寄付」の代わりに信託を活用して、信託契約の段階では次の受益者を決めておかないで、最初の受益者が亡くなった段階で受益者指定権者が次の受益者を指定する(財産の寄付先を指定する)ということができるんです。
このようにすれば、今の段階で寄付先を決めなくても遺贈寄付の仕組みが使えるということになります。
受益者指定権者として動いてくれる信頼できる人を自分で選んで、その人と、例えば「犬の保護をしている団体に寄付してほしい」と契約しておけば、自分が死んだ時点で適切な施設を探してそこに寄付してくれるという仕組みを契約をもって作れるということになります。
いかがでしたか?
おひとりさまでも信託を活用する方法はあります。
今回のお話には記載していませんが、委託者・受託者・受益者をおひとりで担うこともできる「自己信託」という仕組みを作ることもできるんです。