家族信託の費用は高い?本当にそうでしょうか?

「家族信託は高いと聞きました」
「ネットで見ると何十万円もかかるのですよね?」
ご相談の中で、よくいただくご質問です。
確かに、家族信託は数万円でできる手続きではありません。
しかし、“高いかどうか”は何と比べるかによって変わります。
今回は、家族信託の費用について、実務の視点から考えてみます。
家族信託の費用の内訳
家族信託を組成する際には、一般的に次のような費用がかかります。
・専門家報酬(信託契約内容の設計費用)
・公正証書作成費用(公証役場の手数料)
・不動産の信託登記費用(登録免許税・司法書士報酬)
・場合によっては戸籍取得等の実費
※財産の内容や信託設計の複雑さによって金額は変わります。
特に不動産が含まれる場合は、登記が必要になるため、その分の費用が発生します。
ここだけを見ると、「やはり高い」と感じるかもしれません。
では、何と比較するのか?
家族信託を検討する場面は、多くの場合、
・将来の認知症対策
・収益不動産の管理
・相続対策
といった状況です。しかし、実は収益不動産をお持ちでない方にも、重要な問題があります。それは、「自宅不動産」です。「自宅だから収益がでない」=「問題が小さい」というわけではありません。
もし何も対策をしなかった場合、どうなるでしょうか。
判断能力が低下すると、
不動産の売却や大規模修繕、資産の組み替えができなくなる可能性があります。
これは、賃貸アパートに限らず、自宅不動産でも同じことが言えるんですね。
その結果、例えば、賃貸アパートの場合は、
・賃貸経営が止まる
・売却のタイミングを逃す
・家庭裁判所の後見手続きが必要になる
といった事態も考えられます。
これが自宅不動産であった場合は、例えば、
・老人ホーム入所のために自宅を売却してその費用に充てたい
・空き家になった自宅を処分したい
・外壁や屋根の大規模修繕が必要になった
など、こうした場面になっても、所有者に判断能力がなければ手続きは進みません。
さらに、固定資産税は毎年かかる。草刈りや草木の剪定などの管理が必要。ブロック塀の老築化などによる事故リスク。といった不動産に対する管理責任は続きます。
このように、賃貸アパートであっても自宅であっても、「動かせないリスク」があるのです。
また、任意後見や法定後見を利用する場合には、後見人や監督人への報酬が継続的に発生することがほとんどです。(※法律専門家が後見人や監督人に就職すれば、必ず報酬がかかります。)(※継続的な報酬=月額2~6万円程度が目安です。)
単純な初期費用だけで比較すると、高く感じますが、
「将来発生しうるコストや制限」と比較すると見方は変わります。
実際にあったご相談事例(匿名)
浜松市内で賃貸アパートを所有されているB様(70代)のケースです。
B様は、
・アパート1棟を所有
・将来的に売却も視野に入れている
・子どもは2人
という状況でした。
当初は、「数十万円もかけるのはもったいないのでは」と迷われていました。
しかしお話を伺う中で、
・大規模修繕の予定がある
・将来、売却判断が必要になる可能性がある
ことが分かりました。
もし認知症になった後に売却が必要になれば、家庭裁判所の関与のもとで手続きを進めることになります。時間も手間もかかり、柔軟な判断が難しくなる可能性があります。
最終的にB様は、
「自分が元気なうちに道筋をつけておきたい」と、家族信託を選択されました。
費用だけでなく、「安心」に対する投資という考え方でした。
「高い」と感じる理由
家族信託は、形のある商品ではありません。
設計力やリスク分析、将来予測といった“見えにくい価値”に対する費用です。
だからこそ、単純な価格比較では判断しにくいのです。
重要なのは、
・何を守りたいのか
・どんな事態を避けたいのか
・どこまでの備えが必要なのか
を整理した上で検討することです。
費用をかけるべきケース、慎重に考えるべきケース
すべての方に家族信託が必要なわけではありません。
例えば、
・財産が預貯金のみでシンプル
・不動産の処分予定がない
・家族構成が単純
という場合には、遺言や任意後見で足りることもあります。
一方で、
・収益不動産がある
・将来売却の可能性がある
・大規模修繕をする必要が出てくるかもしれない
・親の自宅は親のお金で管理継続したい
という場合は、家族信託の効果が大きくなります。
制度ありきではなく、状況に応じた判断が重要です。
本日のまとめ
家族信託の費用は、決して安いものではありません。
しかし、それは「将来の不安や制限を減らすための設計費用」ともいえます。
高いかどうかは、金額だけではなく、“将来への備え”という視点で考える必要があります。
花橋こずえ行政書士事務所では、制度を勧めるためのご相談ではなく、「本当に必要かどうかを一緒に考える時間」にしたいと考えています。
ご自身やご家族にとって最適な方法を、一緒に考えてみませんか。








