その家族信託契約書、本当に貴方に合ったものですか??

最近、徐々に注目されている「家族信託」。認知症対策に抜群の効果を発揮するということで、取り扱う金融機関も増えてきました。
ところが、その家族信託契約書の内容を十分ご理解しておられますか?家族信託契約書は内容によって、その後の運用の仕方が大きく変わります。
金融機関や士業は「家族信託契約書」を作成しますが、その後の運用はあくまでも「ご家族」になるんです。
ご家族が運用するにあたって適した、運用しやすい契約内容であるべきだと思っています。今日は、このお話をもう少し詳しくさせていただきたいと思います。
例えば受託者の善管注意義務
家族信託契約書に受託者の注意義務が記載されていると思います。受託者に「善管注意義務」が課されていませんか?
もし、善管注意義務が課されているなら、それは1円単位までしっかりと信託財産の帳簿をつけなればならないということです。例えば、信託口口座から10万円をおろしたら、それを何に使ったか、1円単位まで帳簿に記す必要があるんですね。それが善管注意義務を課されたということです。
ところが、実は「自己の財産と同一の注意義務」にすることも可能なんです。信託法の条文の中でちゃんと別段の定めが認められているんですね。そのために、花橋こずえ行政書士事務所では、ご家族の中で信頼関係を基に契約する場合は、「自己の財産と同一の注意義務」としています。
自己の財産と同一の注意義務にすれば、例えば信託専用口座から10万円をおろしたら、通帳の横に手書きでおおよそ何に使ったかを記載しておけば足りるのです。
受託者は基本的に無報酬で信託事務を行います。そのうえ、委託者の介護や病院、施設への付き添いなどご家族として身の回りのお世話をしていることがほとんどでしょう。そのような大変な状況の中、なるべく受託者に重い義務を課したくない。というのが私の思いです。
例えば信託監督人の存在
家族信託契約書に信託監督人を定める項目はありましたか?
もし、信託監督人を定める条項があれば、受託者は信託監督人から監督を受ける立場になります。
そして、その監督人がご家族以外の人になっていますか?例えば弁護士、司法書士、行政書士などです。そのようになっていれば、もしかすると信託監督人報酬というものも定められているかもしれませんね。そうなれば、他人の監督を受け、その他人に報酬を支払わなければなりません。
ですが、信託法の条文では信託監督人を置かなければならないとは定められていないんです。
必要なら置くこともできますよ。ということで、置かなければならないわけではありません。
花橋こずえ行政書士事務所では、ご家族の中で運用する家族信託契約書であれば、信託監督人を置くことはありません。ご家族の信頼関係を基に運用するのですから、他人の監督を受けて、その他人に報酬を支払うことは必要ないと考えます。
そのため、私自身も信託監督人になってはおりませんが、私の元で家族信託契約をされたお客様には、「何か困ったこと、わからないことがあればいつでもお電話ください」とお話しております。信頼できるご家族内の運用であれば、このように必要なときに必要なサポートを行うだけで足りると思います。
例えば信託口口座でなければならないこと
家族信託契約書に信託に使用する口座が記載されていると思います。これは信託口口座になっていますか?
もし、信託口口座となっていれば、金融機関の指定したとおりの信託契約書の内容でなければならなかったはずです。金融機関の指定した内容の信託契約書でなければ、信託口口座が開設できない仕組みになっているからなんですね。
そして金融機関の指定した信託契約書は、今までお話した内容がすべて組み込まれていると思います。「受託者には善管注意義務」を課し、「信託監督人は専門家」を置き、「信託口口座」でなければならない。このような内容になっていると思います。
さらに、信託口口座開設には費用もかかります。ところが、信託法の条文の中では、「信託口口座でなければならない」とは、どこにも記載されていないんですね。
自己の財産との分別管理ができていれば「信託専用の口座」としたもので良いんです。
あらゆるケースに対応できるためと言われるが?!
以前、金融機関の方と面談させていただいた際に「なぜ、このように大変な内容の家族信託契約書を作成しなければならないのですか?」と質問させていただいたことがあります。
そのときのご回答が、「あらゆるケースに対応できるために」とのことでした。
確かに、信託契約書は将来にわたっての、これからのことを契約書で定めていくものですから、考えられるリスクは排除するのがベストです。そのためにあらゆるリスク回避を想定すると、上記のような非常に大変な内容の家族信託契約書になってしまうのでしょう。
しかし、そのリスクは貴方に当てはまるものですか?
もちろん、第三者に対抗する必要がある場合でしたら金融機関さんの提供する家族信託契約の内容は必須のものです。すばらしいリスク対策ができるものとなるでしょう。
ところが、貴方の家族の中で、信頼関係を基に行う家族信託契約にそこまでのリスクを想定したものは必要ですか?
信託監督人という他人に監督を受ける必要がありますか?
善管注意義務を課されて大変な思いをしておりませんか?
若しくは、善管注意義務がそんな大変な義務を負うものだと知らなかったですか?
信託口口座を開設しないといけなかったですか?
家族信託契約はご家族の信頼関係を基に行うものです。
逆に言うと、信頼関係がないのでしたら、そもそも家族信託を行うべきではないんです。
平成19年、信託法の大改正がされて個人の間でも信託が使いやすくなった。これは、金融のための信託から個人の財産に自由を与えるための信託になったということです。
信託受益権は「相続」ではない方法で承継されることが信託法の条文の中で明確に記されました。
せっかくの改正で個人の間で信託ができるようになったのですから、個人が運用しやすい、個人のためになるような家族信託を行いたいですね。
運用するのは貴方ご自身です。
家族信託契約の内容は、本当に貴方に合ったものですか?
これから運用していくときに、不便なこと、大変なこと、心配なことはありませんか?
家族信託契約締結後も、気軽にサポートを受けられる状況にありますか?
契約書を作って終わり。ではなく、気軽に電話で聞ける信頼関係が成立していますか?
本当は電話したいけど、電話したら迷惑な気がする。などと思われていませんか?
家族信託を取り扱う、金融機関、士業、団体は増えておりますので、ぜひ、いろいろなところと比較検討していただいて、自分に一番合った契約書を作成してもらえるところ、契約締結後もサポートを気軽に受けられるところをお選びいただければ幸いです。
