遺言の種類とそれぞれのメリット・デメリット
皆さん、遺言のこと知っていますか?最近はテレビなどでも報道されて、遺言のセミナーも各所で開催され、「遺言」の言葉を聞くことも多くなってきたのではないでしょうか。
ですが、「遺言」について誤った認識をしていたり、せっかく遺言を書いたのに要式不備で無効になってしまったりすることもあります。
紀州のドンファン事件はご兄弟が遺言の無効を主張して争われていますよね。
今日は、遺言について正しく理解していただくために、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」についてお話をさせていただこうと思います。
遺言の種類は?
遺言には、①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言の3種類があります。
③の秘密証書遺言は公正証書遺言と同じように公証役場で作成するのですが、遺言の内容を秘密にするので、公証人も内容を確認できないところが公正証書遺言と大きく違うところです。そうなると、遺言は書いてあること、遺言書の存在自体は公証役場でわかることが利点ですが、内容を確認できていないため、不明確な内容(要式に不備があるなど)であったりすると法律上無効となるおそれがあります。さらに家庭裁判所の検認も必要になります。
日本公証人連合会が発表した「令和5年の遺言公正証書作成件数について」によると、公正証書遺言は令和5年度で118,981件作成されておりますが、これに対して秘密証書遺言は100件程度と随分少ないです。
そのため、本日のお役立ち情報は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つをお話させていただきます。
自筆証書遺言とは?
・遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆で書いて、捺印して作成します。(必ず本文は自筆でなければなりません。※財産目録はパソコンも可。ただし署名押印が必要)
・相続発生後に家庭裁判所による検認手続きが必要です。
自筆証書遺言のメリットは?
・費用がほとんどかからないのでお手軽である。
・遺言を作成したことや遺言の内容を他の人に知られないようにできる。
自筆証書遺言のデメリットは?
・遺言の実現が不確実である(遺言が見つからなかったら?)
・遺言を見つけた遺族は家庭裁判所に検認の申立が必要である。
・検認をしないで遺言を執行すると、5万円以下の過料に処せられる。
・遺言の要式に不備があると無効になる可能性がある。
・全文自筆というのはなかなか大変。高齢の方にとっては大変な作業である。
※法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言保管制度」もあります。
2020年から、法務局で保管してもらえる自筆証書遺言書保管制度が始まりました。
この制度によって、遺言書の紛失や隠匿などを防止でき、発見してもらいやすくなりました。
この制度を利用すれば家庭裁判所における検認が不要になります。
では、次は公正証書遺言についてです。
公正証書遺言とは?
遺言者が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで作成します。(公証人に別場所に出張してもらうことも可能です。(出張費はかかります)なので、病室等での作成も可能となりますので、意思能力さえしっかりあれば高齢であっても作成は可能です。
公正証書遺言のメリットは?
・公証人があらかじめ方式や内容の実現可能性を確認するので、確実に遺言を残すことができる。
・公証人が遺言者の遺言能力の有無を確認するので、後から「無効だ」と訴えられる可能性が低い。
・開封時に家庭裁判所の検認が不要なので、遺族はその分の手間や費用がかからない。
・遺産分割協議が不要になる。(遺言書に記載されたとおりに財産承継がされる)
・原本は公証人役場に保管されるので、万が一紛失したときも、再発行請求ができ、改ざん・紛失のおそれがない。
・遺言の照会手続きが公証役場でできる。(相続人等は公証役場に遺言が保管されているかどうかを照会することができる)
公正証書遺言のデメリットは?
・公証人手数料がかかる
・作成時に専門家に頼むと専門家費用がかかる
まとめ
以上が自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットでしたが、いかかでしたか?
私は、個人的には公正証書遺言をおすすめします。相続発生後の手続きまで考えると、検認手続きもいらないし、遺言能力の確認もとれているし、紛失、改ざんのおそれもないので、遺言者の希望とおりの財産承継が確実に実現できるからです。
とは言っても、自筆証書遺言であれば費用が格段に抑えられるし、法務局の保管制度もはじまっているので、デメリットに十分注意しつつ作成しておくのも良いですね。もちろん、どちらの遺言を作成するかは、遺言を書かれる方のご希望に沿うことが一番大切です。
花橋こずえ行政書士事務所では、「自筆証書遺言の書き方だけ教えてほしい」などの部分的なご依頼も承っております。
ぜひお気軽にお声がけください。