任意後見か?法定後見か?

皆さん、よく聞かれると思います。「任意後見」と「法定後見」です。この違いって何でしょうか?
私もよくこの質問を受けます。どこがどう違うのか、何のためにこの制度があるのか、なんてことを今日はお話したいと思います。
後見制度には2種類あります。「任意後見」と「法定後見」です。
任意後見契約を締結するのか、それとも法定後見制度を使うのかの最大のポイントは、本人の判断能力の有無です。
もう、すでに判断能力が低下している場合は、「契約締結能力がない」ので、法定後見しか利用できません。逆に、まだまだお元気で、判断能力が一定程度保たれている方であれば、任意後見契約の締結ができます。
何のための制度なの?
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力に欠ける、あるいは不十分な人(例えば、認知症の高齢者さん、知的障害者の方や精神障害者の方、自閉症の方、事故などによって脳に損傷を受け、その疾患に起因する精神上の障害をおってしまった方)を保護・支援するため、後見人を選任して、契約の締結などを代わって行ってもらったり、本人の間違った判断に基づいてした行動(必要もないのに、テレビショッピングで大型テレビを買ってしまった等のこと)を取り消したりして、法律的にご本人を支援する制度です。
ご本人の権利が守られるように、後見人がその財産管理と身上保護を通じて、ご本人を保護することを目的とするんですね。
ご注意いただきたいのは、後見人の事務には、現実の介護のような事実行為は含まれないということです。
成年後見人の仕事の範囲は?
主に、身上に関する事、財産に関することの法律行為が仕事になります。
身上に関することでいうと、例えば
・賃貸借契約を本人に代わって行う
・施設への入所契約
・入院契約
・介護契約
などがあります。財産に関することでいうと、例えば、
・金融機関での預金や払出を本人に代わって行う
・売買契約
・消費貸借契約
・年金や生活保護の申請
なども後見人が行うお仕事になるんですね。
後見がはじまったら、途中でやめられない。
「遺産分割協議を行うときだけ、後見人を付けてくれないか?」とたまに言われることがありますが、
それはできません。
後見制度の運用改善案もいろいろ出ておりますが、現在、必要なときだけ後見人を付けるという運用はされていないので、後見人は一度就任すると、本人が精神上の障害から回復して、判断能力を取り戻す又は死亡するまでは辞任はできません。
また、法律専門家が後見人に選任されれば、後見人に対する報酬も毎月必要になってきます。これはご本人の財産額によって違いますが、平均しておよそ月2万円~5万円です。このお金はご本人の財産から後見報酬として支払われることになります。
どんな時に後見制度が必要になるの?
では、実際にどんな時に後見制度を使う必要が出てくるのでしょうか?
それは例えば、
・不動産や預貯金の管理ができなくなった
・介護施設に入所する契約を自分で判断できない
・遺産分割や相続の手続きができない
・悪徳商法などでだまされてしまうことがある。又はその可能性が高い
このような状態が見られるようになってきて、お手伝いできるご家族が近くにいない、いても遠方に住んでいるなどの場合は、後見制度を利用することが必要になってきます。
ただ、すでに、ご本人の判断能力が低下してしまった状態だと、法定後見しか選べません。まだ、お元気で、契約することができる状態であれば、任意後見契約を選べますし、任意後見人として、自分のお願いしたい人(自分の好きな人)に後見事務をお願いすることができるんです。
まとめのイメージ
任意後見とは?
「将来に備える」制度です。まだ元気なうちに自分で自分の後見人になる人を決めて、どんなことをお願いするのかも決めておくことです。
ですので、まだ判断能力はあるが、将来が心配な人
ひとり暮らしで将来が不安な人などは、任意後見が良いですね。
法定後見とは?
「すでに困っている」人のために家庭裁判所に申し立てをして、始める制度です。
ですので、すでに認知症が進んでしまっていて、財産管理が難しい人、
両親が高齢で遠方に住んでおり、契約や手続きを頼める人が近くにいない場合などは、法定後見が良いと思われます。
いかがでしたか?
花橋こずえ行政書士事務所では、ご希望に応じて「任意後見契約のながれ」や「法定後見申し立てのながれ」などもご説明させていただきます。
また、任意後見契約の原案作成や公証役場との調整も承っておりますので、お気軽にご連絡いただければ幸いです。








