橋幸夫さんも認知症を公表された。

歌手の橋幸夫さんが「アルツハイマー型認知症」の診断を受けたと、先日所属事務所が公表されました。橋さんは2022年、79歳の時に軽度の『アルツハイマー型認知症』と診断されたようです。そして、薬で治療されていたようですが、副作用で中止され、2024年、81歳のときに中等度の『アルツハイマー型認知症』と新たに診断されたとのこと、皆さん大変驚いたのではないでしょうか。
ところが、認知症は決して珍しい病気ではなく、私も含めて誰もがなる可能性のある病気です。今日は、こちらの認知症対策についてお話したいと思います。
決して他人事ではない認知症
2024年時点の日本の総人口である1億2,300万人のうち、65歳以上の人口が約3,600万人、2022年の厚生労働省の調査によると、そのうち認知症患者は約443万人となっており、これは、65歳以上の高齢者の約8人に1人の割合で認知症と診断されているということです。
さらに、2025年には認知症患者数が700万人を超え、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されており、今後ますます認知症対策が必要とされる時節になってくることがわかります。
認知症発症のリスクは75歳から急激に増加する傾向にあるようで、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、認知症患者の増加はさらに加速すると見込まれているんです。
ここ、浜松市でも高齢化が進んでいることは同様で、令和2(2020)年28.2%であった静岡県浜松市の高齢化率は、令和32(2050)年には37.8%に達すると見込まれています。
このことから、超高齢化社会に突入している日本において、認知症とどう向き合っていくか。が大きな課題になっているのではないでしょうか。
認知症のはじまりは?
橋幸夫さんの場合は、“同じ事を何回も言う”という症状が出始めたということです。でも、歌はしっかりと歌えていたようでして、ところが、今年1月、歌を忘れ始めたり、“自分が同じ言葉を繰り返す”ことをお客さんが笑ったりする出来事が起こったそうです。※日テレNEWS NNNより
アメリカのアクション俳優で知られる「ダイ・ハード」でおなじみのブルースウィルスさんの場合はどうでしょうか?
ブルースウィルスさんは「前頭側頭型認知症」と診断され、現在は俳優業を引退されております。
そして、ご家族が次のような声明を出されています。「残念ながら、コミュニケーションの困難はブルースの前に立ち塞がる1つの症状に過ぎません。これは悲しいことですが、明確な診断がついて安心しています。私たちが聞いたこともない様な残酷な病気で、誰もが発症する恐れがあります」と訴えました。
前頭側頭型認知症の症状は、物忘れなど有名な症状はほとんど出ず、発症することで人格が変わったり、衝動的で社会性に欠けた行動や、周囲に対して無関心であるかの様な振る舞いをしたり、言葉が上手く出なかったりするケースがあるとのことです。
では、一般的な認知症の初期症状はどんなものでしょうか?
認知症の初期症状は?
- 同じことを何度も言う
- 忘れ物が多くなる
- 約束の日時や場所を忘れる、間違える
- 怒りっぽく、頑固になって落ち着きがなくなる
- 単純な計算にも時間がかかる
- 料理や鍋を焦がすなど失敗することが増える
- 同じ服ばかり着たり、だらしない恰好や季節外れの格好が増える
などが初期症状として言われています。上記の項目の2つ以上があてはまると、軽度認知症または認知症の可能性があるようです。
初期症状をほっておかないことが大切です
このくらい、歳をとったら誰でもあること、として自分も家族も重要視せず、結果的に認知症が進行してしまうケースが多々あります。
認知症は進行性の病気なので、早期発見、早期治療により遅らせることも可能な場合もあるのですが、放っておいたために手遅れとなるケースも多いようです。
家族や本人が「何かおかしい」と小さな異変を感じたり、いつもは穏やかなのに急に怒ったり、怒鳴ったりなど「いつもと違う」を感じたら、まずは受診することが大切です。
その他に今、できることは?
財産管理面に対策はできていますか?
実は、日本人は特に生前対策を行わない民族なんですね。生前対策といえば「遺言」を思い浮かべる方も多いでしょうが、実際に「遺言」を書いた人は死亡した人の全体の約1~2割程度なんです。
遺言というと、縁起が悪いと思われ、子どもたちから提案することもタブーな風潮が日本にはありますが、英米では生前対策をしておくのが当たり前なんです。信託なり、代理人なり、自分が元気なうちに設定しておくことが当たり前で、逆に生前対策をしていない人がほとんどいない。そんな社会なんですね。
しかしながら、日本ではほとんど生前対策をせずに、認知症を発症したり、介護になったりしています。
何もせずに認知症になってしまったら?
基本的には何もできなくなります。預金をおろすことも、自宅を含む不動産を売却することも、契約行為も何もできなくなって、手が付けられない状態が続きます。
このような状態になって、初めて、「どうしよう」「どうしたらいいんだ?」とご家族が考え始める。これが多くの場合の今の日本の現状です。
この場合、死亡して相続となれば相続人が財産の管理・運用・処分ができるようになりますし、遺言を書いていれば、遺言に書いたとおりに財産の承継が行われますが、では、その死亡するまでの期間はいったいどうなるのでしょうか?
認知症を発症して、死亡するまでの介護の期間、この期間に例えば契約行為をする必要が出てきてしまったら、どうなるんでしょうか?
実は、成年後見制度を利用して後見人を付けて、後見人に財産管理をしてもらうことでしか、現状は何も対応ができないんです。これが現実です。
成年後見制度は別の記事で詳しく説明していますが、多くの場合、他人の関与を受けることになってしまいます。ご家族の思い通りにはならないことが多いんですね。
では、どうすればよいのか??
家族信託は、今、やっておける対策の一つです。
逆に言うと、元気なうちにしかできない契約なんですね。
自分が元気なうちに、自分の信頼する人に財産の管理・運用・処分を託することができる。個人と個人の間で信頼関係を元に行う契約行為なんです。
成年後見制度とは大きく違って、他人の関与を受けることがありません。成年後見制度では、法定後見であっても任意後見であっても、後見人若しくは最終的には家庭裁判所の監督を受けることになりますが、家族信託では他人の関与を受けることは基本的にありません。
何もせずに認知症になったら、自宅の固定資産税は誰が支払うの?
ご自宅を持っている方が認知症になって、施設に入ることになったら、その家の固定資産税は誰が払うのでしょうか?さらに、施設の費用はどこから捻出されるのでしょうか?
残念ながら、対策を何もせずに施設に入所された親御さんの場合、その子供たちが立て替えていることもままあります。
銀行がやってる代理人制度を使えばいいんじゃない?
そうですね。銀行は「代理人制度」で、事前に代理人として認められた(設定した)人に、認知症となった方の預金の引き出しなどを行える仕組みを作っています。
ところが、本当にそれだけで安心ですか?銀行により運用の仕方に多少の違いはありますが、主に以下のような問題が出てきます。
銀行の代理人制度では、預金しか対象になりませんので、自宅を含む不動産は対象外です。何もできません。
それに、ある程度の金額の預金を引き出す際には、身分証と請求書や領収書など何に使うかわかる証憑がその都度必要ですし、理由ももちろん聞かれます。毎回ではさすがに面倒ですよね。
さらに、後見人が付くことになれば、その預金も後見人の管理下に置かれますから、代理人だからといって預金をおろすことはできなくなりますし、その預金通帳自体、後見人に手渡さなければなりません。
家族信託は自由な制度です。
家族信託は「契約」ですから、契約の目的に沿っていれば内容を自由に決めることができます。お金の使い道も非常に幅広く設定できます。
もちろん、自宅の固定資産税も施設の費用も、信託した財産から捻出することができますから、子どもたちは立て替えなくても良いので、助かりますよね。
自宅を売って、施設の費用に充てることもできます。もちろん、親御さんが元気なうちは、自宅に住んでもらっていていいんです。いよいよとなって、施設に入ることが決まったら、子どもたちで売ることができるんです。子供たちのタイミングで、好きなときに売ることができるんです。
認知症は誰もがなる可能性のある病気です
認知症になることは、決して恥ずかしいことでもなんでもない。普通に誰もがなるかもしれない病気なんです。そうなってしまったら、今まで大切に貯めた貯金も不動産も、誰も何も手が付けられない状態になってしまう。
そうなる前に、信頼できる人と、自分のためにお金を使ってもらう家族信託契約をしておきませんか?
自分の選んだ未来を、自分の信頼する人に託しませんか?
今、この元気なときに、ご自身とご家族のこれからのことを考える時間を作っていただけたら幸いです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
